連結会計システムの導入は、初期費用も運用費も決して小さくない投資です。「便利になりそう」という感覚だけでは役員会を通らず、金額に見合う効果を示す必要があります。ただ、連結決算の効果は「決算が早くなる」だけではありません。手作業に伴う誤りのリスクや、担当者に業務が集中している状態が解消されることも、企業にとっては十分な価値です。この記事では、費用対効果を測るための具体的な指標と、ROIの考え方、そして稟議資料としてどうまとめるかを整理します。
費用対効果を計算する前に、分母となるコストと分子となる効果の範囲をそろえておく必要があります。ここが曖昧なまま数字を作ると、社内で質問を受けたときに答えられません。
システムの費用は、初期費用とランニングコストだけで捉えられがちですが、実際にはもう一段あります。導入プロジェクトに割く自社担当者の工数、子会社の担当者への説明と教育にかかる時間、運用に慣れるまでの習熟期間といった間接的なコストです。これらは請求書に現れないため見落とされやすく、稟議のあとで「思ったより手間がかかった」という評価につながります。コストは初期費用・ランニングコスト・間接コストの3つに分けて洗い出しておきましょう。なお、費用の相場や内訳そのものについては、以下のページで詳しく紹介しています。
また、クラウド型とオンプレミス型では費用の発生の仕方そのものが異なります。どちらを前提に置くかで結果が変わるため、提供形態の方針を先に固めておくと計算がぶれません。
連結会計システムの効果としてまず挙がるのは決算業務の効率化ですが、それだけを分子に置くと投資額に見合わないという結論になりやすくなります。実際には、手作業による転記ミスの減少、監査対応の資料をそろえる手間の軽減、担当者への業務集中の緩和といった効果も同時に生まれます。金額に換算しにくいものもありますが、洗い出しの段階では区別せず並べておき、後から「金額で示せるもの」と「リスクの低減として示すもの」に振り分けるのが進めやすい手順です。
効果を説明可能な形にするには、導入前の状態を数値で記録しておくことが欠かせません。導入後に比べる相手がないと、変化を示せないためです。次の4つは、連結決算の現場で記録しやすく、かつ改善が現れやすい項目です。
連結決算に関わった人数と、それぞれが費やした時間を掛け合わせた総工数です。親会社の経理部門だけでなく、子会社側で資料を作成している担当者の時間も含めるのが実態に近い数え方になります。四半期ごとに記録しておくと、繁忙期の負荷がどこに集中しているかも見えてきます。人件費に換算しやすいため、金額での説明にそのまま使える指標です。
決算日から数えて何営業日目に全社分のデータがそろったかを記録します。連結決算のスケジュールが遅れる原因の多くは、集計そのものよりデータが集まりきらないことにあります。回収完了日は日数という単純な数字で示せるため、社内でも共有しやすい指標です。特定の子会社で毎回遅れているといった傾向も把握できます。
提出された資料に不備があって差し戻した回数や、集計後に修正が必要になった件数です。件数そのものだけでなく、1件ごとの対応にかかった時間もあわせて記録しておくと、効果を工数に換算できます。この指標は業務の正確性を示すものでもあるため、後述する「守りの効果」を説明する材料にもなります。
連結決算の一部を外部に委託している場合は、その費用が削減余地として直接計算できます。あわせて、監査法人からの質問に回答するための資料作成や、根拠データを探す作業にかかっている時間も記録しておきましょう。過去の数値をさかのぼって確認できる状態になれば、この工数は縮まります。
指標がそろったら、投資対効果として計算します。連結会計システムの費用対効果は、次の考え方で計算するのが基本です。
ROIは「削減できる年間コスト ÷ 導入・運用コスト × 100」で求めます。あわせて、投資回収期間を「初期費用 ÷ 年間の純削減効果」で概算しておくと、何年で元が取れるのかという形で説明できます。削減できるコストとして挙げられる主な項目は、決算集計作業の工数削減、ミスの修正や照合作業の工数削減、外部委託費の削減の3つです。
計算の手順としては、まず前項の4指標で導入前の状態を数値化し、次にシステム化によって減ると見込まれる割合を置きます。仮に、集計作業に月20時間を費やしている担当者が1名おり、人件費を時間あたり3,000円と置くと、年間では72万円相当の工数が発生している計算です。この工数が半分になると見込むなら、年間36万円が削減額の候補になります。ここで置いた前提はすべて資料に明記し、根拠を問われたときに説明できる状態にしておきましょう。
見積もりが甘くなる典型は、削減率を大きく置きすぎることです。導入直後は操作に慣れる期間があり、初年度から想定どおりの効果が出るとは限りません。また、システム化しても子会社側の入力作業そのものは残るため、グループ全体の工数がゼロに近づくわけではない点にも注意が必要です。控えめな前提で計算しておけば、実際の運用が想定を上回ったときに評価が下がることはありません。複数の前提を置いてパターンを作り、幅を持たせて示すのも有効な進め方です。
数字がそろっても、並べ方によって伝わり方は変わります。決裁者が知りたいのは「いくら得か」だけではなく、「今のままだと何が起きるか」でもあります。
効果の説明から入ると、投資の必要性が伝わりにくくなります。先に、担当者に業務が集中している状態、手作業に依存していることによる誤りの可能性、決算スケジュールに余裕がない状況といった現状の課題を示し、そのうえで解決手段としてシステムを位置づけると、話の筋が通ります。前項の4指標で記録した数値は、この現状把握にそのまま使えます。
金額に換算できる効果は削減額として示し、換算しにくい効果はリスクの低減として言葉で示します。誤りが発生しにくい仕組みになること、担当者が交代しても業務が止まりにくくなること、監査に対して根拠を提示しやすくなること。これらは金額では表しにくい一方、企業の信頼に関わる論点として決裁者に響きます。両面を並べることで、費用対効果の議論が金額の多寡だけに収束するのを防げます。
なぜこの製品を選んだのかという問いには、比較検討の記録で答えるのが確実です。どの製品を候補に挙げ、どの評価軸で見て、どこに差があったのか。デモやトライアルの段階から統一した評価項目でスコアを残しておくと、稟議資料の作成が後から楽になります。評価の進め方については、以下のページも参考にしてください。
稟議が通ったあとの進め方については、導入手順のページで整理しています。
連結会計システムの費用対効果は、決算の総工数・データ回収完了日・差戻しの発生件数・外部委託費と監査対応の工数という4つの指標で測ると説明しやすくなります。導入前の状態を記録しておくことが出発点であり、そのうえでROIと投資回収期間を控えめな前提で計算します。資料は、現状のリスクを先に示し、削減額と守りの両面で効果を並べる構成にすると、決裁者に判断材料が届きます。金額の大小だけで語らず、今の体制を続けた場合と比べる視点を持つことが、納得感のある投資判断につながります。
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連結会計システム(連結決算システム)は多機能なシステムを導入すればいいというわけではなく、自社に適したシステムを見極めて導入することが欠かせません。
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