複雑化するグループ経営において、連結決算のワークフロー改善は多くの企業が抱える課題といえます。本記事では、手作業や表計算ソフトを中心とした従来の業務フローが抱える課題から、システム導入によるワークフローの変化、自社に合ったシステムの選び方までを解説します。
連結決算の最初のステップであるデータ収集は、多くの担当者にとって重い負担となっています。グループ内の各子会社が独自の会計ソフトやフォーマットを使用している場合、提出されるデータの形式がバラバラになりがちです。それを親会社の担当者が手作業で一つひとつの項目を修正し、統一されたフォーマットに整える工程には膨大な時間がかかってしまいます。決算期という限られた時間の中で、このデータの回収と加工に多くのリソースを割かなければならない状況は、業務の大きなボトルネックになり得るといえるでしょう。
データを収集した後に待ち受けているのが、グループ間で行われた内部取引の消去や連結仕訳の作成といった複雑な処理です。これらを表計算ソフトなどで管理していると、計算式のミスや手入力による転記漏れが発生するリスクを避けられません。一つのセルがずれるだけで最終的な数値に大きな影響を与えてしまうため、担当者は何度も見直しを行うことになります。このような手作業に依存したワークフローは、確認作業に追われる原因となるだけでなく、正確な数値を迅速に算出するという本来の目的を妨げる要因にもなっています。
複数の子会社とやり取りを進める中で、どの会社からデータが届いているか、現在どの工程まで完了しているかを把握するのは容易ではありません。さらに、連結決算の処理は高度な専門知識が求められるため、経験豊富な特定の担当者に業務が集中してしまう傾向が見られます。このようないわゆる属人化が進むと、その担当者が不在の際に業務が滞ってしまったり、引き継ぎに多大な時間を要したりする問題が生じます。業務プロセスが個人の頭の中にブラックボックス化されている状態は、組織としてのガバナンスの観点からも改善が求められる領域です。
システムを導入することで、これまで手作業で行っていたデータ収集のワークフローが大きく様変わりします。各子会社に入力用のアカウントを付与し、直接システムへデータを登録してもらうことで、親会社側でのフォーマット変換や転記作業を削減することが可能です。また、既存の会計ソフトやERPと連携できるシステムを選べば、データの抽出から取り込みまでを自動化することも期待できます。これにより、経理担当者はデータの集計業務から解放され、より本質的な数値の分析や経営への報告業務に専念できるようになります。
手計算や表計算ソフトに頼っていた複雑な連結仕訳も、システム上で自動的に処理されるようになります。あらかじめ設定したルールに基づいて内部取引の消去や未実現利益の控除などが行われるため、人為的な計算ミスを未然に防ぐことが可能です。システムが正確な計算を担保してくれることで、これまでのワークフローで多大な時間を費やしていた数値の突き合わせや検算の負担が軽減されます。正確で信頼性の高い財務データが迅速に整うことは、外部監査への対応をスムーズに進める上でも大きな助けとなるでしょう。
多くの連結会計システムには、グループ全体の決算進捗を一覧で把握できる機能が備わっています。ダッシュボード上でどの子会社がデータ提出済みで、どこが未完了なのかが一目でわかるため、個別にメールや電話で確認する手間を省くことが可能です。さらに、システム上で一連の処理履歴や修正のログが残ることで、誰がいつどのような作業を行ったのかという業務の透明性も高まります。ワークフローが可視化されることにより、特定の人に頼りきりだった業務体制を見直し、チーム全体で協力して決算業務を進めやすい環境が整うといえます。
新しいシステムを検討する前に、まずは自社の現在のワークフローを正確に把握することが重要です。各子会社からのデータ収集手順、ファイルのやり取りの方法、担当者の作業時間などを時系列に沿って書き出してみてください。そのプロセスの中で、どこに時間がかかっているのか、どこでミスが起こりやすいのかといった課題を明確にする作業が必要です。現状のボトルネックを特定することで、システムにどのような機能を求めるべきかという要件定義がしやすくなり、導入後のミスマッチを防ぐことにつながるでしょう。
導入候補のシステムが絞り込めたら、現在のグループ規模や将来の事業展開に合致しているかを確認します。海外拠点を有する場合は、複数の通貨や異なる会計基準に対応できる機能が求められます。また、親会社や子会社で現在稼働しているERPや会計ソフトとスムーズにデータ連携ができるかどうかも欠かせないチェックポイントです。データの取り込みが手動のままでは、システムを導入してもワークフローの効率化が半減してしまうため、自動連携の可否やインターフェースの使いやすさをデモ画面などでしっかりと確認しておきましょう。
システムは導入して終わりではなく、現場の担当者がスムーズに使いこなし、新しいワークフローが定着してはじめて効果を発揮します。そのため、システム提供会社のサポート体制がどの程度充実しているかを見極めることが欠かせません。初期設定の支援や操作マニュアルの提供はもちろんのこと、実際の決算期に生じた疑問に対して迅速に回答してくれる窓口があるかどうかが重要になります。会計の専門知識を持つコンサルタントが伴走してくれるようなサポートを選べば、システム移行に対する現場の不安を和らげることができるでしょう。
連結決算業務は企業の財務状態を正しく把握し、経営戦略を描くための大切な土台となります。しかし、手作業を中心としたワークフローのままでは、データの収集や確認作業に追われ、肝心な分析業務に手が回らないという事態に陥りかねません。連結会計システムを導入し、データ連携や複雑な計算を自動化することで、正確性の向上と業務の大幅な効率化を見込むことが可能です。自社の抱える課題とシステムの機能、そしてベンダーのサポート体制を照らし合わせながら、自社に適したワークフローの構築に向けて一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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連結会計システム(連結決算システム)は多機能なシステムを導入すればいいというわけではなく、自社に適したシステムを見極めて導入することが欠かせません。
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